剛と柔

剛と柔
昨日、30年近く自然乾燥材の供給に取り組んでこられた林業家と話をしました。
2000年の法改正以降、木造住宅の構造は金物や耐震壁で剛に固める構造が主流です。
そのためには、人工乾燥した狂いが少なく強度が明確な木材をプレカットすることになります。
自然乾燥材がいいか?
人工乾燥材でいいか?
家造りの合理化には短期に乾燥する人工乾燥材とプレカットが前提となります。構造的には金物や耐力壁を適切に使
うことで工学的には強い建物になります。
自然乾燥は十分に乾燥させるには長い時間がかかりますし、自然乾燥材は湿度によって変形する傾向があります。
割れたりすることもあります。一方人工乾燥材は乾燥が安定しますので割れたりはしにくい傾向があります。これはとても魅力的なのですが、人工乾燥をする過程で、高圧をかけるなどの木の生命を越えた作用を与えるので木の内部細胞が壊れることを引き替えにして安定するようになっているだけで、木の本来の生命を保っていないという指摘があります。

本物の木の良さを保つには自然乾燥材がいいと思います。自然乾燥の木は20年を経ても自らの樹液と力で、艶を出し瑞々しい美しさを保ちますが、多少の狂いはでます。人工乾燥した木にはそのような生命力は望めませんが、安定しています。
どちらがいいか?
それは、結局、価値観の問題かもしれません。
少々無理して、和菓子に例えると、
防腐剤などの添加剤を加えない材料の味だけで成立する生菓子と防腐剤、添加剤などを加えて味と日持ちを整えたお菓子との差異のようなものでしょうか?
今建てられている無垢の木をつかった家のほとんどは人工乾燥材をつかったプレカットの家なのです。
それはそれで、現代的な合理的な家づくりの良さがあります。そして、ほとんどのかたは、十分に木の良さが出た家と思われています。
一方、
自然乾燥材をつかい柔構造で建てた家は心地よいものです。
ただそれは、木の生命に鋭敏な方々に感じられる世界かもしれません。