津波を低くする「双胴型防波堤」

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*長く愛されつかい続けられる建築を「生きる建築」と考えています。
ブログ本「生きる建築」
http://www.nonose.jp/about/photo/1333257052t0-file5.pdf

目次
【生きる建築をつくるポイント1.大震災に強い建築にする。】
【生きる建築をつくるポイント2.魅力が持続するデザイン「いき」の建築にする。】
【生きる建築をつくるポイント3.機能更新を受容できる建築にする。】
 

〈株式会社野々瀬建築都市設計事務所http://www.nonose.jp/

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「生きる建築」には、津波対策も必要です。

中央防災会議が3月31日に発表した南海トラフの巨大地震による 震度分布・津波高について(第一次報告)によると、
一千年に一度の巨大震災の場合、徳島にも防波堤を越えて高い津波が押し寄せる予測となった。徳島県庁も経済センターも被災します。都市が一端、津波に飲み込まれると復興するのは時間と資金が膨大に必要になって大変な事態となります。それは、東北の三陸海岸を視察しての実感です。
ですので、破滅的な津波被災を回避するためには、津波を撃退する防災対策が必要になるとおもいます。
最近、津波撃退対策として可動式防波堤という方式が脚光を浴びてきていますが、想定外の巨大地震対策にこのような可動式の対策で大丈夫でしょうか?詳しいことを知る必要があるように思います。
もっと、自然な方式が無いのか・・・?と思って調べていたら、ちょっと古い記事ですが下記の記事を見つけました。
この津波を低くする新型防波堤は、自然で期待できそうに思います。そろそろ模型実験もされる時期にきています。研究の成果に注目していきたいと思います。

津波低くする新型防波堤「双胴型防波堤」
波を通過させ弱める、高さ10分の1に 景観にも優しく
 富山大学奥村弘講師(計算流体力学)らの研究チームが、波同士が打ち消し合う作用により、津波の高さを約10分の1に減らす新型の防波堤を考案し、特許を出願した。波をせき止めるのではなく、一定の間隔を開けて並べた角柱の間を通過させて弱める仕組み。4月頃に模型を使った水槽実験を予定しており、準備を進めている。(堀内佑二)
 研究のきっかけは、東日本大震災の大津波で、基礎部分が水深63メートルの海底に築かれた、岩手・釜石湾の「世界最深」の防波堤が破壊されたこと。奥村講師によると、従来型の防波堤は想定を超える大津波を真正面から受け止めた場合、決壊するか、波に越えられてしまう。
 奥村講師と同大工学部の松島紀佐教授らが考案した「双胴型防波堤」は、上から見ると、細長いひし形の角柱を、海岸に直角に向くようにして海中に並べたもの。波は角柱の間を通過するとき、両側の壁に当たって斜めに反射し、波の山と谷で打ち消し合う干渉作用により低くなる。コンピューター上の想定実験では、波の高さを約10分の1にまで低減させることができた。昨年9月に日本流体力学会で発表し、特許も出願した。
 波を低減させる効果は、波が高いほど大きくなるという。平常時には波をそのまま通すため、環境への影響も少ない。奥村講師は「大津波に備えて防波堤を高くする一方では海が見えなくなり、景観を損なう。新型防波堤と従来の防波堤を二段構えで使えば、より効果が期待できる」と話している。
(2012年1月15日  読売新聞)

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緊急レポートM9.1 南海トラフ地震「20m巨大津波からどう逃げる」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32303
2012年04月13日(金)フライデー :現代ビジネス


3月31日、内閣府有識者会議が発表した南海トラフ地震による最大津波高(予測値)をもとに構成。単位はメートル。東日本大震災クラスの大津波が広範囲で発生する
http://gendai.ismedia.jp/mwimgs/c/b/-/img_cba26c37b434c3861336641ac1f60fce247258.jpg
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 6都道府県で20m超の津波が発生し、震度は6強・・・またも列島を襲う1000年に一度の大災害から我々はどうやって身を守ったらよいのか 文字通り、列島が激震した。

 3月31日、内閣府が発表した「南海トラフの巨大地震による最大クラスの震度分布・津波高の推計結果」は実に衝撃的だった。

 フィリピン海プレートユーラシアプレートと衝突してできた4000mもの深い海溝---南海トラフは過去、東南海地震(1944年)、南海地震(1946年)といったM8クラスの巨大地震を100〜200年周期で起こしていることで知られている。駿河湾から、四国の南方を経て、九州沖まで、広く西日本に被害を及ぼす海溝としても著名だ。

 今回、東日本大震災の被害が想定をはるかに超えていたことを教訓とし、古文書、地殻変動の痕跡、過去の津波の堆積物など、ありとあらゆる要素を考慮して、南海トラフ地震の被害を再シミュレーションした。その結果、想定震源域の面積は2倍に、地震の規模を表すマグニチュードは実に3倍となるM9.1という、すさまじい数字が弾き出されたのである。

 震度6弱以上が想定される地域は20府県350市町村から24府県687市町村に増え、震度6強は9県120市町村から、大阪、三重など21府県395市町村に激増。高知、愛知、静岡など実に10県153市町村で震度7の巨大地震が想定されている。

 そして最も衝撃だったのが津波高だろう。これまで最高17m(高知県高岡郡四万十町)とされた津波は34・4m(同幡多郡黒潮町)と倍増。実に6都県を20m超の津波が襲うと予測されたのだ。静岡県御前崎市には21mの巨大津波が押し寄せる。たちまち、18mの堤防を建設中の浜岡原子力発電所を危惧する声があがった。

 ただ、勘違いしてはいけない。

 今回、メディアがセンセーショナルに報じている「津波34m」などの数字はあくまで、「考えられうる最大値」。国や地方自治体が住民などの避難先や、避難施設の建設など、防災対策を練る際に根拠として用いる数字であり、「南海トラフ沿いで次に起こる地震津波」が必ずこの規模で起こることを示すものではないのだ。

 もちろん、楽観はできない。

 本誌4月6日号で「今後発表される南海・東南海地震の新しい予測値を見て、国民はかなり衝撃を受けると思います」と予告していた村井宗明衆議院災害対策特別委員長(38)はこう解説した。

「政府は東日本大震災で発生した20m超の大津波について『想定外』と弁解しましたが、同じ言い訳はもう通用しません。次の大震災は最悪の事態を想定しておく必要があります。今回出された数字はあまりに津波高の数字が大きく、多くの人を驚かせましたが、そのくらい、今の日本は危険な状態にある。震災以降、小さな地震があちこちで発生。列島全体のバランスが崩れています。これを専門用語で『応力状態の変化』と言いますが、大型地震が起こりやすい状態にあるのです。4月〜5月中には10mメッシュ(100m2。従来は50mメッシュ)単位で、ピンポイントの津波高の予想値を出す予定です。国民の皆さんは、より細かい予測値を把握して備えてください」

 例えば名古屋市に住んでいて、巨大地震が起きたとする。最大津波高は3.8mだから、港区、熱田区、南区を避け、千種区名東区に逃げれば安全なことが分かる。居住地域の海抜と予測値を把握しておけば、津波から逃れられるのだ。

 だがしかし---今回の発表によれば、静岡や和歌山など、最短2分で津波が到達する市町村も存在する。

 逃げる時間もない人々を救うのは堤防ということになるのだろうが、例えば34mもの堤防など、そう簡単に建設できるわけがない。そもそも巨大堤防の効果には疑問符がつく。東日本大震災で、10mを超えるスーパー堤防がやすやすと破壊されたのは記憶に新しい。

 この難問を解決するヒントは、東日本大震災にあった。

■松島町の奇跡

 富山大学・総合情報基盤センターの奥村弘博士(計算流体力学)が説明する。

三陸沖の巨大津波で、海岸沿いのほとんどの市町村が壊滅的な被害を受けました。例外だったのが松島町です。同じ松島湾にある東松島市では1000人もの死者が出たのに松島町の死者はわずかに2人。住宅は一軒も壊れませんでした。松島町付近に浮かぶ小さな島々が津波を弱めたんじゃないか---そう考えたのが、研究を始めたキッカケです。津波が弱まるということは、逆流するような現象が起きているわけですよね。堤防のような構造物で受け止めるのではなく、受け流しながら反射させる、そんな『水のカーテン』を作れないものかと研究してきました。そして、三角形の堤防を作ることで、津波とは逆方向の水流を生み出し、波と波をぶつけて津波の威力を打ち消せることが実験を通して証明できたのです」


南海トラフ地震 最大震度マップ(震度6以上)
今回、新たに発表された予測値をもとに編集部で作成。国土の約7%にあたる2万8000㎢もの広大な地域に震度6強の脅威が迫る
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 菱形の角柱を並べることで、津波の破壊力を10分の1に低減できるという。

釜石港(岩手)の世界最大の堤防が3・11の津波で崩壊しました。堤防は、高潮ぐらいなら耐えられても、津波の圧力には抗いきれないのです。私が考案した『松島型堤防』を沖に設置すれば、従来の堤防でも津波を防ぐことができる。防波堤のないところでは、例えば海岸線の防風林に設置することで、景観を維持しながら、かつ上陸しようとする津波の勢いを殺すことができます」(奥村博士)

 巨大地震では、川を津波が遡上することによる河川の氾濫、浸水も予測されるが、これも河川の河口付近に「松島型堤防」を置くことで弱めることができるという。ただし、我が国の堤防の規格は法律で定められており、現状では「松島型堤防」の洋上での整備は不可能。こちらの法改正も待たれる。

 村井委員長は4月3日、さっそく奥村博士と「松島型堤防」について話し合いを持ったという。

東日本大震災では8mぐらいの低い堤防でも壊れました。20mもの堤防なら、簡単に倒れるでしょう。そこで松島型堤防などの新技術に注目しています。まだ水槽での実験段階ですが、実用化に向けて研究を進めていきます」(村井委員長)

?1000年に一度の大震災?と言われた東日本大震災と今回の南海トラフ地震には奇妙な一致点がある。ともに「今後30年の発生確率」が「60%」とされていたのだ(政府資料より)。つまり、南海トラフ地震が明日起こったとしても、何の不思議もないのである。

 6月には死者数など被害想定(直接被害)推計が公表されるが、見直し前に2万5000人と予測されていた死者数が大幅に増加するのは間違いない。先の東日本大震災に学び、改善していくべきことはまだまだある。再び村井委員長。

東日本大震災災害対策基本法の重大な欠陥が発覚しました。例えば、60条に避難についての規定があるのですが、他の都道府県など遠方への避難や長期間の避難についての規定がない。他県へ長期的避難を余儀なくされた方の費用を国が支出する手続きが複雑でした。人工透析が必要な方や、要介護のお年寄りがスムーズに避難するためのルールも作らねばなりません。大都市が被災した場合、避難した方の人数分、仮設住宅を整備することは不可能です。隣接する都道府県の空いている民間賃貸住宅を借り上げるほうが手っ取り早いですよね。今回の南海トラフ地震津波高データなどをもとに、より高い地域にある賃貸住宅の業者と事前の災害協定を結び、避難準備する必要があります。緊急物資の調達・運搬についても、欠陥が見つかっています。今国会中に法改正をできるように調整中です」

 未曾有の震災を乗り越えられるかどうかは、人類の叡智にかかっているのだ。次ページからは、南海トラフ地震震源域にある原子力発電所について考える。

取材・文/小谷洋之(ジャーナリスト)

「フライデー」2012年4月20日号より
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